リレーエッセー 第47弾

我が家のネコ自慢

塚野 和男(学10EB)

私の家には今、最年長は12歳、最年少が2歳までの6匹のネコが同居しています。 いずれも自宅前の公園や溝の中に捨てられ、ミーミー鳴いていたり、ぐったり弱っているのを、見るに見かねて引き取ってきたネコばかりです。

そんなネコですから、いま流行のペットショップで売られているような純血種ではなく、毛並みの悪いまったくの駄ネコ連中です。

昔から、「犬は人につき、猫は家につく」といわれていますが、猫でも永年一緒に暮らすと犬同様、私ども夫婦になじみ、慕ってくれています。

同じネコでも性格は6匹ともまったく違います。その違いがまた面白い。それは、多くのネコと暮らしたものにしか味わえない楽しみといえるでしょう。

今日は、そんな我が家のネコをご紹介します。

最年長、12歳の「トム」は、オスの黒ネコです。 黒ネコは不吉だということで捨てられたのでしょうか、家の前を流れる都賀川の岸で一晩中、鳴いていたのを女房が拾ってきました。

生後、2,3ヶ月ほどで、目やにがたまり、目がほとんど見えない状態でした。

また、尻尾の神経がどうかしたのか、大きくなってもピンと立てることができず、「だらりの尻尾」です。 なにかの弾みで尻尾を戸口に挟まれても、一向に痛がりもしません。

そんな「トム」ですが、ちゃんと座りますと首の部分にわずかに白い毛が見え、丁度、黒いスーツに白ネクタイというおしゃれないでたちに見えます。

性格は、オスネコではありますがいたって優しく、後輩ネコをいじめることはまったくありません。 後で紹介するメスネコの「ジジ」と仲がよく、いつも連れ立って外出しています。 老境に入って持病の喘息が気になるこのごろです。

トム

次は、メスの白ネコ、「まゆ」です。 家に来るまでは近くの公園の外ネコで、朝晩、女房がエサをやっていましたが、3年前の冬の夜、道をよぎって走りよってきたところを車にはねられました。 幸い、打撲程度で済みましたが、それがきっかけで我が家に身を寄せることになりました。 ですから年齢はわかりませんが、全体の雰囲気などから12歳前後だと見ています。

甘えたときなど、ひっくり返って手足を縮めるしぐさをしますが、これが丁度、かいこの大きな繭という状態で、そんなところから「まゆ」と名づけました。 気が強く、自宅の1階を主なテリトリーにしていますが、時折、2階から降りてくる他のネコ、特に、メスの「ふうこ」には敵愾心を燃やし、追い払うこともあります。 いつも便秘状態なので時折、座敷の真ん中に丸い落とし物をするのが珠に瑕です。

まゆ

メスの雉ネコ「ジジ」は推定、10歳ぐらい。 「トム」が公園で遊んでいるうちに仲良くなったのか、我が家につれてきました。 私も女房も拾ったという印象はまったくなく、「トム」についていつの間にか入り込んだ「居候」という感じです。

その故か、「まさしく借りてきたネコ」状態で、食事のときなどは本当に遠慮深く、他のネコが終わってからようやく済ませるという控えめな性格です。 ですから私たちが抱こうとしても寄せ付けません。 ベッドの裏側とか椅子の下などでひっそり寝ています。 それでも、唯一仲良しの「トム」が外出から帰ってくると舐めて身づくろいをしてやるという親密振りです。

そんなに大食とは見えないのに大太り状態で、歩いているところは、おなかが床に触れなんばかりのユーモラスな姿です。

ジジ

通称「ビビ」こと、「ビビアンヌ」という大層な名前をつけられたメスネコは6歳。 やっぱり、生後、3ヶ月くらいで公園に捨てられて居るのを、「あんまり可愛い」というので女房がつれて帰ったネコです。 極端な怖がり屋さんで、大きな音がしたり玄関のチャイムなどが鳴るとあわてて2階に駆け上がります。

容姿とともに鳴き声も可愛く、抱かれ上手な性格でしょうか夕食時など私のひざに進んで乗ってくる唯一のネコです。

また、「寒がり屋」ということもあって毎晩、女房のベッドに入り込み、最近では、後輩の「ぽん太」と場所取り争いを繰り広げていますが、時には、2匹とも仲良く女房の腕の中で眠るという光景も見られます。

女房にいわせれば、至福のひと時だということです。

ビビ

「ふうこ」は、「ビビ」と同時期、同じ公園に捨てられていましたが、1ヶ月遅れで我が家にやってきました。 「ビビ」だけ連れて帰るのはかわいそうだという女房の頼みで、私が仕方なくOKしたからです。

背中の部分がグレーまじり、お腹が白という色合いですが、座ると背中の模様が左の前足にかかり、丁度、片肌脱ぎの模様に見えるメスネコです。 顔は「ビビ」のように可愛くはなく、むしろ意地悪げな表情ですが、姿、形が本当に日本固有の猫の愛らしさを持っています。 でも、時々の粗相からネコトイレの外にお漏らしをして困らせます。

性格はいたってクールで、「ビビ」のように自分からひざに乗ってくるようなところはありません。 また、なかなか敏捷で、(猫はみんなそうですが)裏口の戸を閉めるのが少しでも遅れると、スルッと脱走して2、 3時間は帰って来ず、私たちを心配させます。 老境に入った「まゆ」との仲が悪く、しばしば、いがみ合っています。

ふうこ

新参の「ぽん太」は2歳のオスネコです。 昨年の夏、先輩ネコと同じように公園に捨てられていたのを、あまりに小さいのでこのままでは死んでしまうということから女房が連れてかえりました。 当時は、片手に乗るくらい小さかったのですが、今では体重が7キロという大きさにまで成長しました。 それというのもこの「ぽん太」はこれまでのネコと違った種類のようで、さきごろの新聞でも伝えられたギネスブックものの、鼻先から尻尾の先までの体長が1.2メートルという「メインクーン」の血が混じっているようです。

ものの本によるとこの「メインクーン」という猫は、アメリカ・メイン州近辺に多く、ロシアから入ってきた猫との混血種で、長毛、がっしりした体つき、長い尻尾などという特徴を持っています。 そうした猫の血が入っているのか、「ぽん太」も1年少しで大きく成長し、先日も体長を計測したところ90センチを優に越えていました。

性格は、「大男、総身に知恵が回りかね」なのか、いたっておおらか。 また、食欲も旺盛で、他のメスネコたちを押しのけて食事をしており、このままではどれだけ大きくなるのか、ちょっと心配です。 長老の「トム」には一目を置いていますが、それでも新参者のくせに、のっしのっしと家中を徘徊しています。

ぽん太

小さかったり怪我をしたりして、生きては行けない捨て猫を保護するという女房の動物愛護の気持ちに対して、その気持ちはわかったとしても、これ以上増えると先輩ネコとの折り合いや、世話をする自分たちの年齢を理由に抵抗して来た結果が、なんとか今の6匹でとどまっています。

このせめぎあいは、これからも続くことでしょうし、果ては何匹になることやら。

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