リレーエッセー 第40弾

Sense of Wonder そして癒しの水族館巡り

金田 弘司(学18EC)

「うわー、すごい!」「むちゃ、きれい!」「おお、こわー!」など子ども達の歓声や拍手が響く水族館は、シニア世代にとっても元気がもらえる所です。 みなさんも一度は行かれたことのある須磨海浜水族園(昭和61年以前は、須磨水族館と呼ばれていた)に、縁があって勤め出してから早や2年半以上が過ぎました。 水族館の使命としては、“レクリエーション”、”教育”、“研究”、“自然保護”と言われていますが、最も重要なことは子ども達に、生きた水族の姿や行動などを直接見たり、聞いたり、また触れ合いを通して、驚きと感動を与え、自然で人間と共生している動物のことをよく知ってもらうことにより、生き物を慈しむ心を育んでいくことだと思います。

このことは、1960年代に農薬の問題を告発した著書「沈黙の春」で有名なアメリカのレイチェル・カーソン(Rachel L. Carson)女史の“sense of wonder”という言葉が如実に物語っています。 本物の自然に触れ、驚きと感動をもって、その不思議さを感じることが大切なのです。 特に子どもは、生来外部の物に対して驚きと感動の心を持っているのですが、大人は成長に連れて感受性が弱くなり、同じような反応が希薄になっていきます。 しかし、本物の動物を見たときに抱く気持ちは大人になっても残っており、子どもに戻って驚いたり、感動したりするのも動物園や水族館で過ごすことの意義ではないでしょうか。 大人にとってみれば、現在ではむしろ“癒しの場”ということの方がわかりやすいかもしれません。

ところで、現在国内には水族館は幾つあるでしょうか。 秋篠宮文仁親王殿下を名誉総裁とする社団法人日本動物園水族館協会に加盟している水族館は、現在67館です。 その規模で言えば、世界最大級の巨大水槽を有する「沖縄美ら海水族館」からそれぞれの個性を備えた小さな水族館まで千差万別です。 須磨海浜水族園は1987年に開園し、誰もが目を見張った当時としては日本最大の大水槽(水量:1,200トン)も、その後の科学技術の進歩により、2002年に開館した沖縄美ら海水族館が有するテレビ等でおなじみのジンベイザメ3匹がゆうゆうと泳ぐ世界最大級の大水槽(水量:7,500トン)は、その6.3倍という巨大なものとなっています。


須磨海浜水族園の大水槽


世界最大級の水槽
(沖縄美ら海水族館)

また、イルカライブを行っている須磨海浜水族園のショープールも比べてみると、1992年に開館した名古屋港水族館のショープールは世界最大級で、そのサイズは、須磨海浜水族園の長さで、3.3倍、幅で2.3倍、深さで3.4倍、水量に至っては実に11倍となっています。

世界最大級のショープール(名古屋港水族館)

ところが、数字で表現されても実感はわからないので、それでは自分の目でみてやろうということで、私の水族館巡りが始まりました。 これまで家内と、また単身で旅行をしても、温泉など観光地が中心でしたが、水族館という目的を持つことができ、必ず水族館訪問を旅程に盛り込むようになりました。 おかげさまで、北は北海道から南は沖縄まで、国内のおよそ半数の水族館を訪問することができました。

大規模で人気の高い水族館、小規模でも地域に根差した水族館、魚の展示が中心で伝統的な汽車窓型の水槽が並んでいる水族館、イルカ、セイウチ、トドなどの海獣を多く飼育し、ショーを主体とする水族館など多種多彩です。 その一方、経営面で苦労が見える水族館もあれば、ショーなどが好評で集客力のある水族館など、見方によって異なる楽しさを満喫できるのが水族館の面白さです。 みなさんも機会があれば、ぜひ水族館を訪れてみてはいかがでしょうか。 子どもの頃に帰って、sense of wonderを体感するのはすばらしいことだと思いますし、殺伐とした現代社会にあって、心のやすらぎを感じ、水族による癒しに浸ることも明日への活力につながると言っても過言ではないと思います。

最後に、蛇足ながら、水族館巡りで、五月の連休明けに北海道へ旅行をした折に撮影した摩周湖の写真を掲載させていただきます。 外大生の頃に流行った歌謡曲「霧の摩周湖」を求めて行きました。 「霧の摩周湖」を作曲した平尾昌晃氏は当時結核療養中のため、訪れたことのない摩周湖を想像して作曲したとのことで、後日訪問したとき、イメージどおりの湖だったと語っているそうです。 私の場合、幸か不幸か、5月晴れのため霧の摩周湖ではなく、晴天の摩周湖となりました?! 残雪を抱く斜里岳、白樺の並木、魔周ブルーと呼ばれる湖面など学生時代を思い起こしながら、感激のひとときを過ごすことができました。

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