リレーエッセー 第50弾

「2013年問題に思うこと」

本学英米学科教授 総務部長 野村 和宏(修12E)

コンピュータの時計が一斉に狂って大変なことになるのではと話題になった「2000年問題」も既に10年前の話になりましたが、今度は「2013年問題」が起こってきました。 年金支給開始年齢についての話ではなく学校現場の話で、これは文部科学省の高等学校学習指導要領改訂による新課程が2013年度から本格実施されることによるものです。 具体的には現行の「英語I、II」「オーラルコミュニケーションI、II」「リーディング」「ライティング」という英語科カリキュラムが「コミュニケーション英語I、II、III」「英語表現I、II」と大幅に再編されたこと、また巷でも話題になっているように学習指導要領の中に「英語の授業は基本的に英語で行う」と明記されたことです。 英語の先生は本当に英語で授業ができるのかといった点や、コミュニケーション力育成というが本当に育てるべき英語力とは何なのかといった点について新聞紙上などでも議論されているのはご存知のとおりです。

新学習指導要領には外国語学習の目的として、言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成し、情報や考えなどを的確に理解し伝える能力を養うと記述され、必履修科目の「コミュニケーション英語I」を核に4技能の総合的な育成を図り、授業そのものが実際の英語コミュニケーションの場となるようにするというのが改訂の要点です。

現在、私自身が神戸外大で英語教員志望の学部生、2部生への「英語教育法」や大学院英語教育学専攻に通う現職の小・中・高の先生方への授業を担当していることや、高等学校英語教科書の編纂に関わっていることなどもあり、最近はこの新課程においてどのような授業展開をすればよいのか、といったテーマで高校の先生方の研究会でお話しする機会が増えてきました。 授業が教科書を中心に展開することを考えれば、教科書に盛り込まれた豊かな素材を生かしながらどう授業を行うかが大切となってきます。理解を深める指導とコミュニケーション力育成のための指導とは相反するものではなく、それぞれの先生方がこれまでに築き上げてこられた自分の授業スタイルを保ちながらも少し意識を変えることで十分に新課程の授業に対応できると思うのです。 私は高校の先生方にプロの英語教員として誇りを持って授業をしてほしいということ、しかし一方でもし現在ほとんど教室の中で英語を使っていないのならクラスルームイングリッシュから始め、授業の本質に影響しない範囲で生徒に対して英語を使っていってほしいといったことをお話しています。

先日、ある高校の先生から珍しい依頼がありました。 それはその高校で使っている教科書を用いて私が新学習指導要領に対応したスタイルで実際に授業をしてほしいというものです。 先生方は私が研究会でお話していることが単に机上の空論ではなく、どのような形で具現化できるのかを見てみたいと思われたのだと思います。 私も「それはできません」とは言えない立場ですのでお引き受けし、教材研究、指導案とワークシート作成を経て、実際に普通科2クラスの生徒たちに授業を行いました。

英語での挨拶に始まりペアワークで生徒に声を出させ、その後は教科書の導入部分や本文について英語で説明しながら授業を進めました。 新出単語も本文の意味も全部英語のままで解説していきます。 途中、答えを全員に一斉に英語で言わせたり、手を挙げさせたりと理解を把握する活動も取り入れていきました。 大学では90分の授業も高校は50分と短く、あっという間に時間が過ぎ指導案で計画した範囲までは進むことができませんでした。 また日本語を介していないことから、その授業で取り上げた範囲の英文を日本語に訳させる期末試験をやったら書けない生徒が多く出ることも予想できます。

しかし生徒たちは集中して授業に取り組んでくれ、授業後の感想も「英語なのに不思議と言っていることがよく分かった」といった意見も多くあって、ほっと一安心でした。 印象的だったのは授業の最後にクラス委員長が普通なら「起立、気をつけ、礼」と号令をかけるところ、その男子生徒が思わず「Stand up!」と大きな声で叫んだことです。 たった50分の授業でも英語で考え続けたことで、この生徒の頭の中にはしっかり英語の回路ができていたわけです。

私は高校の英語教育の現場は高大連携などを通して触れる機会も多く、先生方とも頻繁にお話をしていますが、実際の高校生に全部英語で授業をする機会を持つことはなかなかこちらから申し出て実現するのは難しいものです。 その意味で今回このような機会を与えてくださった高校に感謝すると共に、高校の先生方が来る2013年を見据えて今から少しずつできるところから教室を英語のコミュニケーションの場とする方向へ舵を切り始められることを願っています。 授業が生徒と過ごす豊かな学びの空間であり時間となるために、英語を学ぶ魅力や興奮を生徒に伝えるために、そして英語の教師が「歌を忘れたカナリア」にならないために、2013年問題は格好のチャンスをわれわれに与えてくれていると思うのです。

被爆アオギリ2世の成長

毎月更新しています!

2017年10月24日
(撮影日:2017年10月24日)

過去の写真へ>>



楠ヶ丘会関連サイト

blogbanner

楠ヶ丘会公式Blog

「アオギリの見える

小部屋から」


f ウィメンズくらぶ
公式Facebookページ

第21回講演会の模様  NEW


カレンダー

2017年 11月

2930311234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293012