リレーエッセー 第38弾

続「何故に私は……」

横倉 正明(II15ED)

神戸から約350kmも離れて位置する岐阜県にある寒村の地・白川郷。 その村の祭りを見物するがための料金と思っていたものが実は祭りの行事のなかの「どぶろく」の振舞いにあずかるための費用ででもあることを知るに至る。 400円を支払い木製の盃を入手すれば振舞いの時間内であればどれだけどぶろくを飲んでも結構というのである。 人間というもの飲み放題、食い放題というものには弱い。 深く考えることなく簡単に飛びつくさもしい生物である。

最初にこのどぶろくという言葉を目にし耳にした時は、昔地方田舎の貧しい農家の人々が粟(アワ)や稗(ヒエ)等の穀類を混ぜて潰しアルコールを入れそれに麹を加え発酵させコッソリ醸造し隠れて飲んでいた濁り酒という程度の知識しかなかった。 当時(約25年前)は日本狭しと言えどそれを飲めるのはかの地、白川村だけであることを知ったのはその祭りが行われる場所の入口でUターンをし神戸に帰ってからであったことは前回書いた通り。 400円の盃を買い求めれば天下の秘酒を満足いくまで痛飲できるというその魅力に引かれたのである。 まず当日午後3時頃に白川八幡宮の境内で獅子舞いの奉納が行われる。 獅子舞いをする男3〜4人と色鮮やかな衣装をまとい刀を持った少年が笛、太鼓、鐘等にあわせて種々の演目を踊りこなしていく。 獅子舞いとコラボする役に選ばれた少年はその当り年には学校のヒーローになるのだ、と聞く。 春先より練習を重ね当日は村人やらの見物人の期待に沿うべく懸命の演技を行う。 終った後は獅子舞いの男衆達も少年もやった!という満足感と安堵感の表情を浮かべる。 万雷の拍手が湧き上り村人と見物客との一体感を見ることになる。

続いてメインの行事が執り行われていく。 神主よろしく神々しい衣装を身に着けた村の長老らしき人物がこの日のために準備した羽織袴に手足を通した男達を従え境内の階段を上がった所にある苔むした社殿の中で祝詞をあげる。 それが終ると殿中に供え置かれている大きな樽を棒でぶら下げ担いで運び出し境内に据え置く。 あちこちから騒めきがあがり始める。大きな木樽のフタを木槌で叩き割る。 中身のどぶろくが妙齢の女性やうん年前にはそうであった熟女達の持つ銅製のヤカンに移し込まれる。 この行事を執り行うにあたって主催者の代表が注意事項を述べていく。酔った勢いで決してセクハラ行為に走らないようにと言ったところで笑い声があがり雰囲気がいっぺんに和らぐ。 又、これを飲んだからには車の運転は絶対にしないで下さい。 会場の外に高山から来ている警察の方々が飲酒をされたドライバーの方々をお待ちしております。 と言ったところでさめた笑い声があちこちから聞こえる。 女性の注ぎ手達が境内に敷き並べられたゴザに座り待っている祭りの見物人、参加者の前に立ち合図を待つ。 「それでは始めて下さい。」の合図の掛け声で人々が手に持つ盃にどぶろくが丁寧に注ぎ込まれていく。 待ちに待った瞬間である。 目にしたことのない外観。過去に味わったことのないテイスト。 甘酒のようにトロリとしているが口に含めば全く別物とすぐに分る。口当りは良いがアルコール度数は18度ぐらいあると言う。 この目的のために昼食もぬき350kmを休憩もせず車を走らせ到着した後口にするこの飲み物は真に五臓六腑に浸み渡るのである。

回りを小高い山々に囲まれて存在するこの村の神社には季節がら日暮れが早くやって来る。 いつの間にやら電灯の照明がついていき舞台では老若男女の村人による民謡、踊りが、鐘、三味線、笛、太鼓、尺八等の楽器の演奏にあわせてとり進められていく。 楽器の響きはととも心地良く酔いが程よく回ってくる頃にはこれらが子守り唄になってくれることもある。 振舞いがはじまってしばらくの間はえも言われぬ不思議な味の上、口当りが本当に良いのでグイグイと飲みすすんでいく。 隣り周囲に座っている見知らぬ人とも打ちとけ「どこからですか?」「こりゃホンマにおいしいわ!」「もう何杯飲んだんですか?」「いやぁ、早や酔いましたわ」としゃべるにつれて親しくなっていく。

時間が経過し予定の演目が少なくなると人影もまばらになりついに祭りは終りを迎えることとなる。

平家の落人の里との伝説もあってか舞台で民芸を踊る女子の中にとかどぶろくを注いでくれる妙齢の女性の中にハッとするような美人を見かけることがある。 こんなにも人里離れた素晴らしい自然環境の中であるからこそ子供達は純粋で美人に育っても何の不思議もない。 この村を心の郷里と思い足繁く通っている間にこの地域村が世界文化遺産に登録された。 この自然景観は私が発見したものだ、と厚かましくも思っている。 第二の郷里のことなので我が事のように喜んではいるもののちょっと悲しい側面もある。

機会があればそれらについて触れていこうと思っている。
(続々があるかも…)

被爆アオギリ2世の成長

毎月更新しています!

2017年6月28日
(撮影日:2017年06月28日)

過去の写真へ>>



楠ヶ丘会関連サイト

blogbanner

楠ヶ丘会公式Blog

「アオギリの見える

小部屋から」


f ウィメンズくらぶ   公式Facebookページ

カレンダー

2017年 7月

2526272829301
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
303112345