リレーエッセー 第11弾

私のボランティア生活

関東支部 大谷 陽 (学12E)

あるヴェネズエラ人との出会い

1982年(昭和57年)のある日、駐在していた南米ヴェネズエラのカラカス市内で、一人のヴェネズエラ人女性に日本語で話しかけられた。 彼女は千葉大学への留学を終えて帰国した直後で、日本人の友だちを探しているところだった。 その後、彼女と家族ぐるみのお付き合いが始まった。 彼女の紹介で数人の日本留学経験者や、日本大使館が主催している日本語教室のヴェネズエラ人老若男女の生徒とも親しくなり、お互いの住まいを行き来するような交流の輪が広がっていった。 このような現地の人たちとの交流の楽しみを、我が家だけで止めておくのは惜しいとの思いから、またヴェネズエラ人との相互理解を深める一助になればと思い、駐在員仲間の数家族に声をかけて、自宅でささやかな日本人・ヴェネズエラ人交流会を催すことにした。 第1回目は千葉大学への留学生で日本庭園を研究しながら能面や墨絵を学んだ人に話をしてもらい、外国へ来て外国人から日本文化を学ぶことになった。 第2回目からは、参加者が得意な分野を披露することにして、両国の食文化を紹介しあったり、茶道のお点前を披露したり、ミニ音楽会では日本の琴や三味線とヴェネズエラの民族楽器クァットロなどお互いの国の音楽を楽しんだりした。 これら交流会には、元留学生の家族や友人のほか近所の住人の参加もあり、ヴェネズエラ人の生活様式や文化にふれることによって、日本人の子供達にも両国の文化の違いを肌で感じとってもらうことができた。 このように、一人の留学生との出会いから約2年半の現地生活を有意義かつ快適に送ることができたことを感謝し、帰国後は何らかの方法で日本への留学生のために役に立つことをしたいと思うようになっていた。

在日留学生との交流の始まり

ヴェネズエラから帰国後、妻が東京YWCAの「留学生の母親運動」に参加した。 この運動は、YWCAの会員が日本で勉強する留学生の「日本での母親」になって、生活面学習面の相談にのる活動で、私は、彼らにとって「日本での父親」ということになる。 毎年1,2名の留学生との組み合わせが続いた。 この活動は、ホームステイのように常時一緒に生活するのではなく、必要な時に相談ごとを聞いてアドヴァイスすることや、当方と留学生双方の都合がいい時に自宅に招いて交流するというものであった。 日本での勉強を終えて帰国した留学生から、数年後に彼らの結婚式に夫婦で招待されたり、出張や家族旅行で日本に来たときに、我が家を宿に使ってもらったりする交流が今でも続いている。

日本語教育への関心

この活動での留学生との交流のほかに、東京YWCAでは毎週土曜日の午後に、留学生に日本人との会話を通じて日本語を使う機会を提供するための「談話室」という会を催している。 私はこれに参加して若い留学生との会話を楽しんでいた。 そこでは、日本語や日本の文化について、いろいろな質問を受けることになる。 ところが、それぞれの日本語能力のレベルにふさわしい回答をしてあげられないことがよくあり、そのつど日本語教育能力の向上や日本文化についての知識の必要性を痛感していた。 それで、まず日本語教師養成講座を持つ夜学の専門学校に通うことにした。 その学校で外国人生徒への教育実習を含む一年半のコースを修了した。 さらに日本語教師に必要な日本の政治経済事情や日本文化・地理・歴史についての知識を確実なものにするため、同じような知識が必要な通訳案内業(現在は通訳案内士)試験を受験することにした。 一年間の勉強の後、年一回行われる国家試験に合格し、通訳案内業資格という副産物を得ることができた。 通訳ガイド業とは違って、留学生や一般の外国人に日本語を教えるのには、法的には何の資格も必要はないが、これらの専門学校での勉強やガイド試験の受験勉強で得た知識は、今のボランティア活動に大いに役立っている。

今行っている留学生支援活動

平成13年から、YWCAでは日本語の習得についての留学生一人一人の希望に応じた対応ができるように、留学生と支援者が一対一となる個別対応支援方式が始まった。 私はこの活動に力を注ぐことにした。 この活動では、組み合わせ留学生の希望がいろいろであり、初歩レベルの日本語教育から、大学、大学院への入学試験対策や、入学後のゼミでの発表や卒業論文作成のお手伝いなど専門的になることもある。 彼らとの交流は、こちらが教えるというより、自分自身の日本語能力を高めることや彼らの母国語や、彼らの専門科目を一緒に勉強しようというチャレンジ精神を芽生えさせてくれる。
これまでに、横浜国立大学の中国人女子学生に、中国の環境問題をテーマとする卒業論文作成のお手伝いをしたり、日系企業への就職をめざしていたワーキングホリデイ制度で来日した韓国の女性に、履歴書の書き方や入社試験面接の練習をしたりした。 最近では、JICA(国際協力機構)の専門研修生で、順天堂大学に派遣されていたタイ人の皮膚科の医師に、英語を使って中級日本語を教えた。 今、担当している留学生は、タイの工学系大学院の修士課程を卒業してから、東大での研究を目的に来日した青年で、私の役割は東大の博士課程への入学試験対策から始まった。 建築関係の修士論文の発表と面接のための事前勉強で、関連知識のない私にとって、自分自身の勉強が必要でかなりプレッシャーのかかるお手伝いではあったが、幸い本年4月に東大工学部の博士課程に進学が決まり、現在は、省エネ建物の建築設計ソフトについての研究で、ゼミでの発表や論文作成のお手伝いをしている。

語学ボランティアへの勧め

団塊世代の退職時期になり、退職後の生活スタイル探しが、盛んに話題になっている。 外大卒業後、語学を活用した現役生活をされてきた方々は、その延長でできることを探されれば軟着陸が容易であろう。 語学から遠ざかった生活をされてきた方々でも、現在はいろいろな方法で、いろいろなレベルでの国際関係のボランティア活動を見つけることができる。 よく知られている海外シニアボランティアや、各地方公共団体や民間NGOの国際交流事業や国際親善推進団体での活動など、さらに最近では、国公立私立の別を問わず、いろいろな大学が留学生支援制度でのボランティアを募集している。 それぞれが、自分の健康状態、時間的、財力的余裕を考慮して、自分のできる範囲のボランティア活動に力を提供することで、現役退職後の生活に潤いと価値を見出せるものと思う。
留学生との交流のお蔭で、パソコンやオーディオについての新しい知識を得たり、若い人たちの生活スタイルを教えてもらったりする中で、彼らから得られるエネルギーは日々の健康な生活の糧になっているし、得られるものは大きい。 一番の楽しみは、日本でお世話した留学生が、帰国してからも電話やメールで近況を知らせてくれることである。 いろいろな国で、これら私たち夫婦の息子や娘たちが私たちの訪問を待ってくれているので、できるだけ早い機会に会いに行きたいと思っている。
私たち夫婦の海外旅行の楽しみ方の一つである。

被爆アオギリ2世の成長

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2017年4月25日
(撮影日:2017年04月25日)

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